1947年に創業、ピアニカの開発やエレキ・ギター、アコースティック・ギターなどの製造、販売で知られる東海楽器製造株式会社(以下、東海楽器製造)を、GRACEが完全子会社化したのは2021年の11月のこと。長く、売上が伸び悩んでいた老舗の楽器メーカーは、この2年間で売上高が120%まで伸長しました。企業として再生の兆しを見せる東海楽器製造ですが、一体どんな変化があったのか。GRACEから出向し、東海楽器製造 取締役を務める鈴木崇仁氏(以下、鈴木氏)に話を伺いました。

海外からも称賛される高い品質を保ちながら、セールス、ブランディングは後回しの企業体質

もともと楽器の研究開発を目的として設立された東海楽器研究所を前身に持つ東海楽器製造。1960年代にギターの製造・販売を開始すると、その技術力の高さを買われ、70年代には海外ブランドと技術提携を締結、77年に国産エレキギター業界に商品をリリースすると、その出来に日本はおろか、世界のギタリストまでが魅了されるなど、古くからそのクオリティの高さには注目が集まっていました。

これら東海楽器製造の「高品質な商品」というブランドを下支えしているのが、自慢の職人たちで、彼らによるこだわりの一例を挙げれば、通常のギター製造ではカスタムランクにのみ使われる伝統的な接着剤のニカワを使用し、緻密なネックポケットの処理に時間をかけ、微調整を繰り返すことで、弦振動のスイートスポットを正確に仕上げているほどです。

しかし、自社の歴史が技術力の高さと強く結びついているがゆえに、セールスやマーケティングの部分は後回しに、という職人を抱える企業ならではの企業体質に。結果、売上は頭打ちとなり、GRACEが子会社化する当時の東海楽器製造は、時代とともに埋もれゆく過去のブランドとして、業界の隅の方へと追いやられていた感は否めませんでした。

海外販路の拡大と流通ルートの開拓で、生産数はそのままに売上は120%伸長

2021年11月、GRACEによる完全子会社化の後、東海楽器製造の再生を託された鈴木氏は当時の現場を「良くも悪くも職人気質。極端な変化を嫌う雰囲気があった」と振り返ります。

売上増のため、最初は製品の増産を目論んでいた鈴木氏ですが、職人たちは「今までの通り」を頑なに守り、効率化や量産化には消極的。生産量の増加とは相反する、非効率でも丁寧な仕事にこだわりたいという声が現場からは多く上がりました。一方で、これらの職人的なこだわりこそが東海楽器製造というブランドの生命線であることも事実。ジレンマに陥った鈴木氏ですが、思い悩んだ末にたどり着いた答えは“非効率製造主義”の維持でした。

「こうなったらとことん非効率で、職人による細やかな手仕事が光る商品づくりにこだわろうと。その分、このクオリティの高さを正当に評価してもらえる市場の開拓こそが、私の使命であり、この会社にぴったりな再生の道なのではないか」。

製造工程は基本的にいじらず、生産数もほぼ同量のまま。職人が手間と時間をかけて作り出した製品は、ジャパンクオリティを信奉し、その技術力をより高く評価してくれる海外への販売比率を増やしました。同時に、職人の細やかなこだわり、丁寧な手仕事といった非効率的な製造工程そのものを、自社の強みや誇りとしてブランディング。「東海楽器製造の製品は職人の魂が込もった質の高い製品である」と広く訴えると同時に、商品単価を全体平均でおよそ20%ほど上げました。

これらのブランディングが功奏し、結果、売上高はGRACEの子会社前の実績と比較して120%に向上しました。

職人が生み出すこだわりの製品を音楽を愛する世界各国の人々に届けたい

国内市場はもとより、職人による非効率的な製造工程で作り出したこだわりの製品というブランディングで、「これまで商習慣のなかった国やエリアにも積極的に手を伸ばし、自社製品を、広く海外に売り込むことで企業を再生していきたい」と意気込む鈴木氏。ただし、この取り組みは売上増だけを目的としたものではなく、東海楽器製造の技術と歴史を次世代へと伝承していきたいという想いからだと言います。

「例えば、東海楽器製造のメイン製品のひとつであるギターの主な生産拠点は、コストの問題などにより、近年、アメリカや日本から、アジア諸国へ移行しており、純国産でギターを製作するメーカーは年々減少しています。そんな中で私達が1947 年の創業から今まで培ってきた国産ギターの製造元としての自負、こだわりの技術や想いを次の世代へと継承していきたい。そのためにも世界の多くの方に製品を手に取ってもらい、東海楽器製造のファンになってもらう必要があると思うのです」。

頑固な老舗企業は、自社のアイデンティである製造における「こだわり」を守りつつも、一方でこれまでの楽器市場における商習慣や常識にとらわれないスタイルを柔軟に取り入れることで、これからの歴史を紡いでいく道を確立していくようです。

会社名 :東海楽器製造株式会社
住所  :静岡県浜松市南区遠州浜 2-26-10
事業内容:事業内容 楽器の設計・開発・製造業務及び輸出入業務
     国内市場開拓、国内卸販売、海外市場開拓、海外卸販売

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ストリーミング配信が全盛の現代において、アナログレコードの生産数がここ10年において右肩上がりの伸長をみせています。これに連動するように、過去に販売されたレコード、往時の音楽への注目も集まり、リアルタイム世代のみならず、若年層からも中古レコードの需要が伸びています。

価値の再生をコンプトにGRACEが展開するリユース事業のひとつである、楽器・オーディオの買取・販売事業を行うUNI SOUNDが2023年3月4日に横浜市戸塚区にオープンした「UNI SOUND RECORDS」もこういった潮流に乗り、中古レコードの販売を開始。オープンから連日、老若男女、多くのお客様で賑わっています。

多くの方に訪れていただけるよう、国道1号線沿いに、パーキング付きの店をオープン

もともと、リユース事業で引き取った、まだ十分に楽しめる大量のレコード、レコードプレイヤーをどうにか再生できないかと苦慮していたところ、「ノイズも含めたレコードの音域の広さや、ジャケットデザインを含め、あえてこの時代に”楽曲を収集する楽しみ”を若年層を中心に音楽好きの方に幅広く知ってもらってはどうか」という現UNI SOUND RECORDSの中根慎介店長の想いから、お店をオープンしました。

店内にはレコードのほか、レコードプレイヤーも陳列。これらの販売だけでなく、店頭買取も実施。さらに横浜市南区にあるUNI SOUND同様に楽器、オーディオの買取も行っております。加えて、お店には専用パーキングを用意し、近隣のみならず県内、県外から多くの音楽好きの方に訪れていただけるお店にしました。

国内盤を中心にJAZZ、ROCKなどオールジャンルで在庫総数10,000枚の品揃え

店内に並ぶレコード類は国内盤を中心にオールジャンルを取り揃え、その数は在庫総数10,000枚にもおよびます。なかには、なかなか市場に出回らない希少なタイトルも揃っており、日課のように毎日、お店を訪れる常連の方も少なくないそうです。

「近年、日本で1970〜80年代にかけて作られた『シティ・ポップ』という音楽に世界が注目したように、まだまだ古くても良いもの、価値を有しながら家の押し入れで眠っている音楽は多いです。価値観、ライフスタイル、趣味・嗜好の多種多様化がすすむ現在こそ、中古レコードの価値は高まってくるはず」と中根店長も意気込みます。

大量廃棄社会からサーキュラーエコノミーへ、そして価値観の多様化が進む現在だからこそ、ブームが去ったもの、価値が失われたと思われているものにも光があたる。「使わなくなったものが誰かのためになる」というリユースマインドは、レコードビジネスにこそ当てはまる言葉なのかもしれません。

UNI SOUND RECORDS

住所:神奈川県横浜市戸塚区影取町182-8 専用駐車場5台分完備
アクセス
●車でご来店のお客様
国道1号線沿い影取町交差点そば
●バスでご来店のお客様
戸塚駅(JR、地下鉄ブルーライン)西口「戸塚バスセンター」
→藤沢駅北口行(戸81)→「影取」下車 目の前
営業時間:12:00〜20:00
定休日:水・木曜日
HP:https://lit.link/unireco/

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